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だんがいのさっかく
断崖の錯覚
黒木 舜平
「文化公論 第四巻第四号」1934(昭和9)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,483 字 · 26 页
六
訪問を行った。
六
私が「いでゆ」のドアをあけたとたんに、わっと笑い崩れる少女たちの声が聞えた。私はどぎまぎして了った。ひらっと私の前に現れたのが、昨日の断髪の少女であった。少女は眼をくるっと丸くして言った。
「いらっしゃいまし。」
少女の瞳のなかに、なんの侮蔑も感じられなかった。それが私を落ちつかせた。それでは、昨日の私の狂態も、まんざら大失敗ではなかったのか。いや、失敗どころか、かえってこの少女たちに、なにか勇敢な男としての印象を与えたのかも知れない。そう自惚れて私は、ほっと溜息ついて、傍の椅子に腰をおろした。
「きょうは、私、サアヴィスしないことよ。」
日本髪の少女は、そう言っていやらしく笑いこけた。
「いいわよ。」断髪の少女が長い袖で日本髪の少女をぶつ真似をした。「私がするわよ。ねえ、私、だめ?」
「ふたり一緒がいい。」
私は、酒も飲まぬうちに酔っぱらっていた。
「あら! 欲ばりねえ。」
断髪が私をにらんだ。
「いや、慈悲ぶかいんだ。」
「うまいわねえ。」
日本髪が感心した。
私は面目をほどこして、それからウイスキイを命じた。
私は、私に酒飲みの素質があることを知った。