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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

信長は、情報を聞くと、

「公方どのの顔がみたいな」

一笑を、洛中に向けて、そこへは一日も軍を停めず、大坂へ出てしまった。

ふいを衝かれたのは石山本願寺である。にわかに信長の軍を迎えて、なすところを知らなかった。

しかし、信長は、

「いつでも叩くぞ」

と、いう陣容だけを示すにとどめている。兵力の消費は彼のいまもっとも避けようとしているところだった。そしてこの間に、使者はたびたび京都へ出向いている。

この正月、信長よりさしあげた十七ヵ条の意見書にたいするお答えは如何? ――であった。

またそれには、強硬な最後通牒の意味もある。

義昭としては、将軍家という司権者の立場から、自分の諸政にたいする信長の意見書などに、耳をかす気もなかった。けれどただ十七ヵ条のうち二箇条だけは、強硬に迫られると、困る問題だった。

それは第一条の、

――武門棟梁の職にあって、王城のもとに館居しながら、朝廷に参内もせず、王事をかえりみぬ不臣の罪。

と、第二条の、

――天下の泰平をはかり治安民福を任とする位置にありながら、諸国へ密使を通わせ、みずから乱をつくるなど大政輔弼の身にあるまじき狂態。