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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

ああ、よい茶の子

ささ、朝茶の子

すると――

茶々と万寿のふたりの上で、いきなり小銃の音が、パンパンパンとつづけざまに響いた。

櫓の狭間から彼方の嘲弄者の群れへむかって、つるべ撃ちを喰わせたのである。

「――怖ッ」

茶々は、うつ伏して、耳をふさいだ。万寿はさすがに男の児である。仰向いて白壁の狭間に這う弾けむりを見あげていた。

歌の声はやんだ。

敵の影も、霧にかくれた。

「……いなくなっちゃった。つまらない」

万寿はまだ見ていた。うしろの方で、乳母と母の声がした。

お市の方は、さっきから見あたらない二児をここに見出して、

「……まあ!」

と、さも胆を冷やしたように絶叫をもらし、

「あぶないッ。なんでこのような所へ」

彼女は、茶々をかかえ、乳母は万寿をひっぱって、半ば叱りながら本丸のほうへ連れもどった。

「なにしている」

良人の長政は、一群れの老臣や部将と共に、無念そうな唇をかんで突っ立っていた。

「御城外の歌声に、和子たちが釣られて、あの遠くに身を曝し、おもしろげに見ておりましたので……」

「……子どもだのう」

と、長政は苦笑して、

「奥へつれて行け」

「……はい」

「いや、待て待て。