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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

ほかの子も抱いて、その辺りから、見物しておるがよい、寄手のやつ輩も、長陣に倦むまいとして、戯れておるものを、鉄砲で返答するも、ちと狭量じゃ。……和子たち、いまよいものを見せてやるぞ」

長政は、雑兵をあつめて、敵方へ歌い返せといいつけた。籠城の退屈に、やや倦みかけていた城兵は、よろこび勇んで、

浅井が城を

茶の子と仰っしゃる

赤飯茶の子

強茶の子

と、大声あげて歌い出した。

城兵が歌い囃すと、

「やりおるぞ。敵も」

と、寄手の兵は、また以前の山にすがたを現わして、

浅井が殿は

熟れ栗の実

棘のよろいに

可愛いのもの抱え

揺るるも恐や

ああ、落ちかぬる

憂い身かな、憂き城かな

もとより即興――口まかせである。敵の一踊りがしずまると、城内方も負けずにやり返した。

信長どのは

橋の下の泥亀

ひょいと出て、ひっ込み

ひょいと出て、ひっ込み

首わざの巧さよ

こんど出たら取ろ

茶せん首

どっと笑う。

彼方の山まで谺する。

それを機ッかけに、その日の小銃戦はまた始まった。いま歌っていた兵、いま踊っていた兵が朱にそまって、ばたばたと傷つき始める。

こういう毎日の生活のなかに、お市の方は、四人の子をかかえ、彼女は彼女の戦いを心のうちで血みどろにしていた。