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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

04 第四分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页

青空文庫

さっきから舌をふるっているのは彼ひとりだった。しかも懸河の弁である。

舌ばかりでない、眼もよく働く。いや五体の端までが、その雄弁とともに、八方の敵へ戦々と鋭敏な気くばりを怠らないのであった。

「…………」

たれも手が出せなかった。

わけて三河守は、自分の責めの重大を感じているし、彼の説くことにも、だいぶ耳を傾けて来た容子だった。一時の驚愕をとりもどして、茶室で見せた彼の落着きになりかけていた。

「一同の者」

ようやく、彼は身をゆるがした。手を遠くへ振って、

「去れ、去れ。彼方へ退いておれ。――ここは三河守にまかせて。――三河守が一身にかえても、若君にお怪我はさせぬ。各※(二の字点、1-2-22)の部署にもどっておるがいい」

と、云った。

そして、藤吉郎へ向って、ことばを改めた。

「のぞみ通り、多勢のものは退けた。このうえは、万寿さまを、この方の手へおわたしなさい。左様な策はおたがいに避けて、信義と信義をもっておはなししよう」

「ならぬ!」

と、つよく頭を振ったが、藤吉郎は一転語気をかえて、

「――それがしは今、こういえます。長政どのの掌中の珠を奪ったから。