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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
04 第四分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,841 字 · 376 页
「何、面目ないと。……ああそうか。そちの父、茶わん屋捨次郎は、あの近郷では手びろく商いしていた大家、その若主人が落ちぶれ果てたすがたで、面目ないと申すのか。――それともまた、その茶わん屋にわしが丁稚奉公していたあいだ、主人の息子であったその方が、事ごとに、幼いわしを虐めたから、その仕返しを受けはせぬかと、それを恐れて顫いておるのか。……案じぬがよい、中村の日吉は、そんな小僧ではなかったはず、そちも覚えているだろうが」
「……はい、はい」
福太郎は、鼻をつまらせて、嗚咽しだした。
藤吉郎がまだ日吉とよばれていた頃、たしか彼のほうが二ツか三ツ年上であったから、ことし三十五歳の藤吉郎に対して、彼もすでに三十七、八になっているはずである。
「供の中について来るがよい。帰城の後、身の上も聞いてやろう。――来いよ、悪いようにはせぬ」
そういって藤吉郎は、鞍の上に身をうつした。家臣は、彼の命のまま福太郎を促して供のなかに歩ませた。
堀尾、蜂須賀のふたりは、後に残って、
「では、わたくしどもは、竹中殿の御全快まで、これにおりまして」
「むむ、半兵衛の看護を頼んだぞ。くれぐれ軽はずみをさすな、気を労うて帰城をいそぐなと、半兵衛にも伝えおけよ」