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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
09 第九分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页
して、将監の意中は」
「これに携えて参りました」
網代笠の裏を覗き、笠の緒の付根をパリッとり取った。その下に貼り込めて来た一通の書状が彼の膝へ落ちた。新六は、畳み目を伸ばして主人の手へ渡した。
安政は、封の表をとくと見て、
「うむ、たしかにたしかに将監の手蹟。……が、これは兄者人への名宛てになっておる。新六、わしに従いて来い。すぐ兄者人へお目にかけ、また、中尾山の御本陣へも急達して、およろこびの顔を見よう」
「お待ち下さい」
新六は倉皇として、べつな小屋へ退がり、僧衣をかなぐり捨てて具足を纏い直して来た。
「お供いたしましょう」
主従はそこの柵を出て、なお行市山の頂上へと登って行った。兵馬、柵門、営舎の布置は、上へ行くほど堅密になる。そしてやがて仮城とも見える本丸小屋と無数の陣幕が山上に展かれ、中央に馬簾、旌旗などの簇立している所こそ問わずして、佐久間玄蕃允の床几場と知られる。
「久右衛門安政じゃ。兄者人へ伝えられよ」
陣門の番将へいうと、旗本の近藤無一が走り出て来て、
「おう、御舎弟様ですか。――殿は御床几におられませぬ」
「中尾山へでも行かれたか」
「いや、あれにおられます」