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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
09 第九分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页
と、呟いた。
玄蕃允はなお糺した。
「――が、それには何ぞ、確証があるか」
「もとより嘘言は申し上げませぬ。しかし、ここ数日の御猶予あらば、なお仔細に、筑前の動静をお耳に達し得られましょう。……長浜表にはなお、それがしの目をかけておいた者、幾十人かはおりますゆえ、この身が北ノ庄殿へ加担と知れば、必ず長浜を脱して尋ねて参る者も幾人かございます。またべつに放ちおいた細作の報らせもある筈で――」
将監は、期すところを述べて、
「その上、羽柴勢を敗地へ墜し入るの良策をも、同時におすすめ申したく存ずる」
と、信念の程をほのめかした。
「念には念を入れよ――か。さらば、将監の申すにまかせよう」
と、勝家は大いに喜色を持ち直した。玄蕃允もまた心に満を持しきって、来るべき戦機を待ちかまえた。
――越えて、十九日の朝方である。山路将監は佐久間玄蕃允と共に、ふたたび勝家の帷幕を訪うた。そしてここに、彼がゆうべ早耳に入れた重大な敵の機密と、併わせて、それに沿う作戦上の献言とを、勝家に呈したのであった。
降将山路将監正国が、その朝に齎したものは、たしかに重大であった。玄蕃允はすでに聞いていたが、初耳の勝家は、一瞬、眼をらんとさせ、全身の毛穴をそそけ立てた。