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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

09 第九分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页

青空文庫

廓は外の曲輪をいい、塁は各部の囲いをいい、砦はその中心全体をいう。

急築粗造ではあるが、城廓様式の形は備えているので、この大岩山のそれも一つの城といってさしつかえない。

中川瀬兵衛清秀は、その前晩中腹の一塁にある寝小屋に眠っていた。

「――はて?」

物音か、叫喚か、何かはまだ意識せず、彼はふいに、ガバと首を擡げたのだった。

「何かある……?」

夢と現の境の――第七識のはたらきが、彼をして、突然、何ということもなく、枕もとの鎧を、手早く身につけさせていた。

ところへ、寝小屋の戸も外れよとばかり外から叩く者があった。また一名が、それへ体をぶつけたらしい。

戸は、内側へ倒れ、三、四名の部下が、転びこんだ。

「し、しッ、柴田勢ですっ」

「はや、押しかけました、大軍をもって」

湖畔から駈け通して来た太田平八と、馬取の小者たちだった。

「落着け」

瀬兵衛は、叱った。

――が、太田平八を始め、馬卒たちの告げることは、余りにうわずっていて、敵の兵力、懸り口、その主将など、何ひとつ、要領を得ない。

「不敵にも、これへ中入りして来る程の者とあれば、およそ生やさしい敵ではあるまい。