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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
09 第九分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页
首帳第一は、当然、何といっても、瀬兵衛の首をあげた近藤無一であったが、無一は、
「首を掻いたのは、私ですが、討ったのは、大勢のお味方です。私一名が、筆頭を占めてよい理はございませぬ」
功を戦友に譲って、かたく記名を辞退した。
無一、年二十一歳だった。よい侍、目をかけてやれとは、勝家もいっていた者である。佐久間家にも、こうした武者は少なくなかった。
戦捷の飛札を添えて、中川瀬兵衛の首級は、直ちに狐塚の柴田勝家の本営へ送られた。それと共に、玄蕃允は、使いをして、
「夜来、長途を来て、今暁からの合戦にて、兵馬は大いに疲れておるゆえ、今夜は、当所において夜を過ごす覚悟。――お案じあるなと、お伝え申せ」
狐塚までは、迂回路をとると四、五里もあるが、直線に行くと一里余しかない。勝家が、瀬兵衛の首級を目に見たのは、同日の午頃だった。
「やったわ。甥めが」
大喜悦である。
しかし、今夜は所在の陣地に一泊するという伝言を聞くと、急に眉をひそめた。
「――もってのほかな」
と、厳しい反対だ。大利に酔うて驕るは兵家の禁物とするところである。一刻もはやく敵中から足を抜け。さもなくば袋叩きの目にあうであろうぞ――と、戒告して、その旨を、かたく使者に答えて帰した。