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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
09 第九分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页
と、秀吉の命令が、自身を名ざすまでの順番さえ、もどかしそうに緊張していた。
左右の小姓近衆のほか、召し呼ばれた諸将はあらまし準備のため退いたが――氏家広行、稲葉一鉄などの地侍二、三の輩と、直属の堀尾茂助吉晴には、まだ何の指令もなかった。
たまりかねた容子で、氏家広行は、われから進んで秀吉へ訊ねた。
「それがしの手勢も、お供の用意にかからせたく存じますが?」
「いや、お汝は、大垣に残っておれ。――岐阜の抑えに」
そして、堀尾吉晴へも、
「茂助。その方も残れ」
と、同時に命じた。
それを最後に、秀吉は陣幕を出て行った。と、すぐ大声で、
「作内っ、作内っ」
と呼びたて――
「さきに吩咐けておいた飛脚どもはどうした。揃うたか」
「はっ、あれにお指図を待ちおりまする」
加藤作内光泰は、すぐ走って、彼方に控えさせていた約五十名の健卒を秀吉の前につれて来た。
これはさきに秀吉が(足達者な飛脚を五十人ほど揃えておけ)――と光泰に命じておいたものである。
秀吉は、その健卒たちへむかい、直々にこう告げた。
「きょうこそは、われらの生涯のうちにも、またとない一日。――その日の先駈けに選ばれたその方どもまた男の子冥加というものじゃ。