轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
09 第九分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页
敵の去った敵陣には、もう味方すら影まばらだった。尾撃の急なるまま、ともすれば、秀吉自身が、置き残されてしまいそうである。
「あっ、お馬ですか」
わずか四、五人の武者がそこらにいたに過ぎない。秀吉に、馬を馬をと急かれて、彼らはうろたえ気味に、駈け廻りつつ、口々に答えた。
「お馬は、乗換の鹿毛まで、賤ヶ嶽の岨道に、お捨て遊ばして来ましたので、これには曳いて参りませぬ」
すると、秀吉は、癇癪を起し、ばかっ、と呶鳴ったようである。足踏み鳴らして見せながら、柿団扇で指した。
「――そこらに、落ちているのを拾って来い。馬はいくらもあるではないか」
事実、敵の捨てて行った馬はいくらも飛び廻っていた。矢を負って、いなないている馬。見事な鞍のみ置いて、人はなく、手綱を引きずって歩いている馬。選ぶにまかせている姿である。
彼は、敵の馬を拾って、敵の退却路を、鞍上から一望した。
ここに立つと――
ここから南北の嶺道は、嶺ながら概ね平らだった。余吾西岸の足海、茂山のあたりまで、ほとんどゆるい傾斜をもった降りである。今やここの山岳戦は、一転、野戦に移るべきことを地勢は教えていた。