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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

09 第九分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页

青空文庫

余りな、偏愛の咎であった。盲愛の毒であった。

ひいては、叔父甥という、骨肉のそれと、軍律の中の、総帥と部下との、儼たるものとを、感情にまかせて、混同していた大なる過誤の生んだものである。

(それも、わしがさせた……)

勝家は、いま覚った。

養子勝豊が、長浜で叛いたのも、その原因は、玄蕃允にあった。また、かつて能登の戦場では、前田利家に向ってさえ、おもしろからぬ、不遜な行為があったと聞いたこともある。

――が、そういう瑕瑾を認めても、なお、玄蕃允の素質は、慥に、衆にすぐれていた。べつに、良いところを、多分に持っていた。

(ああ、それが却って、今日、命とりになろうとは……)

呻いて、寝返りを打った。悪夢でもみているように。

その時である。ここの短檠もゆれるばかり、武者たちが、外の廻廊を駈けて来たのは。

隣室、またそれに連なる部屋ごとに、仮寝していた国府尉右衛門や浅見対馬守や、小姓頭毛受勝助などは、

「叱ッ。何者だっ」

と一方で、寝所の衛兵が、跫音を制する声を聞きながらも、各※(二の字点、1-2-22)、すぐ廻廊へ立ちあらわれて、

「何事か」

「何か、異状でもあるや」