轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

09 第九分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页

青空文庫

お市の方は、その子の髪をまさぐりながら、終始、涙をこらえているに精いっぱいの容子に見える。

中の姫もそろそろ居眠りをし始め、ただ姉姫の茶々のみが、さすがに母の想いを察し、この夜の宴が何であるかをも知って、いじらしい程、冴えた面をしていた。

母に似て、むすめ達は、みな美貌であったが、わけて姉姫の茶々は、織田家の血脈にある高貴な香を、その妙齢と、天質の美にあわせ備え、見る者の眼を傷ましめずにおかなかった。

勝家は、ふと、

「あどけなさよ」

と、末姫の寝顔へいった。そしてこれらの弱い者、幼い者たちの身について、お市の方へ、こう諮った。

「お身は、信長公の御妹、この勝家の室へ移られてからも、まだ一年には満たぬ御縁じゃ。――子らを連れて、夜明けぬ前に、城を出らるるがよい……。富永新六郎を添えて、秀吉の陣所まで届け参らそう」

お市の方は、涙して答えた。

否とよ……。と泣いていう。

武門に嫁ぐからには、かかることに会うも、覚悟の前、宿命の業、今さら驚いてはおりませぬ。

この期において、城を出よとは、むしろお情けないおことばです。筑前の陣門へ頼って、いのちを助からんなどは、思いもよらぬこと――とのみ、袖の裡の面を振っているらしく眺められた。