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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

09 第九分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页

青空文庫

この上は、五郎左など頼んで――」

と、信孝は当惑の果て、一切の運命を、老臣たちの善処にまかせた。いやこのような帰着となってから善処などという余地があろうはずはない。

老臣らもまた、秀吉の陣門に叩頭のほかはなく、信孝の生母の坂氏、及び家族の女子たちを質子とした上、なお自分らの母たちまで送って、

「ただ御寛大なお処置を仰ぎまする」

とのみ、丹羽五郎左衛門長秀にすがって、ひたすら信孝の助命を乞うた。

秀吉は、ゆるした。

和を容れるに際して、信孝の老臣たちへ、

「三七どの、お目がさめたか。わかれば祝着」

と、苦笑して見せた。

即刻、人質を安土に送り、つづいて岐阜城内におかれていた三法師の身を受け取って、これまた安土へ移した。

そして以後、三法師の擁護を、信雄の任として、これを託し、同月二十九日、宝寺城に凱旋した。――帰って二日めには、はやその年の大晦日であったのである。

天正十一年の元旦は雪のあとのうららかな日ざしが、朝から新城の真新しい木々に照りかがやいていた。

家臣たちの年賀の受礼は、どこでもおよそ二日が慣例であったが、羽柴家には由来、慣例というものが余りない。