轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
09 第九分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 187,757 字 · 375 页
初めは、軒々に佇んで、かたまり合っていたり、各戸の店頭に腰かけなどして、町中が雑談笑声に賑おうていたが、やがて更けて来た夜靄のうちを、先触れの先駆二、三騎、
「お着き。程なくお着き」
と、飾磨方面の並木道から、辻の木戸へ、路傍の警固へむかって、合図して駈け去ると、大手の夜空は一きわ明々と篝を熾にし出し、町の沿道は、急に、凍てついたようにひそまり返っていた。
領民はのこらず軒下の路傍に坐っていた。薄氷も張る寒夜の大地に、莚も敷いていないのである。
――が、時は経っても、城主の列はなかなかこれへ見えない。思うに秀吉はその日、尼ヶ崎辺から乗船して、海路の北風を負って今しがた飾磨の港に着いたのであろうが、船はついても、多くの供の衆や、馬匹、荷駄などを降ろすのになお手間どっていたのであろう。
土下坐して待つ領民の背に、白い霜が立つように思われた。あちこちで咳声もする。騎馬の城士はなお再三、
「まだまだお着きにはいとまがある。夜半の御入国じゃ。御母堂様のお気づかいもあること。皆、戸をたてて眠りにつくがよいぞ。内へ入れ、家の内へ入って寝め」
頻りに諭し廻ったが、情をもって、そういわれればいわれるほど、土下坐の領民は、なお立たなかった。