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せっしょうせき

日本の諸国物語

楠山 正雄

楠山正雄『日本の諸国物語』。同一底本的分册已合并为一书。收入:殺生石、葛の葉狐、和尚さんと小僧、長い名、鬼六、物のいわれ、赤い玉、安達が原、雷のさずけもの、白い鳥、忠義な犬、春山秋山、人馬、松山鏡、三輪の麻糸、夢占、瓜子姫子、姨捨山、山姥の話、しっぺい太郎。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,040 字 · 158 页

青空文庫

とうとう山がつきて谷のような所へ出ました。ひょいと見ると、そこに一軒うちらしいものの形が、夜目にもぼんやり見えました。何でもいい、とにかく入って、わけを話して、今夜はたのんで泊めてもらおうと思って、うちの前まで来るとすぐ、とんとん、戸をたたきました。でも中はしんと静まりかえって、明り一つもれてきません。ぐずぐずしているうちに、山姥が追っかけて来て、見つけられては大へんだと思って、馬吉はかまわず戸をあけて、中へ入りました。

入ってみると、中は戸障子もろくろくない、右を向いても、左を向いても、くもの巣だらけの、ひどいあばら家でした。

「なるほど、これではいくらたたいても返事をしないはずだ。人の住んでいないうちなのだ。それでもしかたがない。今夜はそっとここにかくれて、夜の明けるのを待つことにしよう。」

と、独り言をいいながら、馬吉はそっと上がっていきますと、そこはそれでも二階家で、上は物置のようになっていました。

「同じかくれるにしても、二階の方が用心がいい。」と思って、馬吉は二階に上がって、そっとすすだらけな畳の上にごろりと横になりました。横になって、どうかして眠ろうとしましたが、何だか目がさえて眠られません、始終外の物音ばかりに気を取られて、胸をどきどきさせていました。