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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
「手の懸らないいいお客さんだ」
宮地翁はこんなことを云って知己の人に話して笑った。河野には細君があった。お米と云う女の子もあった。細君には同藩の木村知義と云う人の妹であった。河野は時とするとその木村といっしょにやって来た。木村は河野と往復した書簡及びその直話を筆記して、「至道物語」と云う一篇の書を作ってこれを宮地翁に送って来た。至道は河野の道号であるのは云うまでもない。
明治二十年四月下旬になってから河野は百日間の断食の行を始めた。そして、七月の末になってもう二三日すると満行になると云う日になって、河野は宿の主人を呼んだ。河野はその時机に倚り懸って俯向いていた。主人は急いで河野の室へ入って往った。庭には午後の暑い陽がぎらぎらと光っていた。河野はすこし顔をあげて主人の方を見た。
「気の毒じゃが、氷水を二杯とってくださらんか」
従来河野は断食することがあっても水だけはすこしずつ用いていたが、その時の断食に限ってすこしも水をとらなかったから、それに同情していた主人は早速氷をとって来て盆へ載せて持って来た。
「これは有難い、私も今両三日すると、満行になるが、急に往かねばならぬことになったから、手数をかけた」