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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

主人は思いきってその傍へ寄って往って、片手を掛けて揺り動かした。

「先生、先生、先生」

河野の体はもう硬くこわばっていた。

河野が死んでから二十日ばかりしてのことであった。何かの用事で東京から大阪へ往っていた宮地翁は、中の島の知己の家で河野の寄寓していた粕谷治助に逢って、河野の歿くなった話を聞かされた。

明治三十四年五月、東京麹町区飯田町の皇典講究所では神職の講習会があった。宮地翁はその時「神仙記伝」と云うものを編輯していた。神職講習会へ来ていた備前の国幣中社安仁神社の禰宜太美万彦と云う者が、某日一人の伴とともにやって来た。万彦は宮地翁の机の傍にあった神仙記伝の原稿に眼を注けた。

「あなたは、神仙のあることをお信じになって、これを編輯なされておりますか、それとも、ただ面白い記録として編輯なされておりますか」

「実在を信じておりますから、こうして数年にわたって編輯しております」

「そうでございますか」

万彦は神仙記伝の話をそのままにして他の話をして帰って往ったが、翌日になるとまた一人でやって来た。

「昨日は他に人がおりましたから、何も申しあげませんでしたが、私も神仙の実在を信じておる者でございます」