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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
彼は胸がむかむかとして来たのをぐっとこらえた。彼はどこかカフェーへ入って、ソーダ水へウイスキーの佳いのを割って飲みたいと思ったが、やっと懐へ入って来た女を逃がすような隙を作ってはならないので、すぐその気もちを押しのけるようにして歩いた。
鰻屋のかしくは、そこの大通路の裏になった街にあった。彼の立っている側には交番があった。彼は交番の前から十字街をむこうへ往って、すぐ左にある狭い街へ折れて往った。もう多くの家は雨戸を締めて、その間にぼつぼつ交った食物屋のような家が起きているばかりであった。
鰻屋は街の右側にあった。そこは巷の角になっていて、巷の方にも入口があるので、裏通路からその巷を入って来た者は、その巷の方の入口から入るのであった。天風が入って往くと顔馴染のある肥った婢が出て来て二階へ案内した。
「一人伴が来るからね」
「お伴さん」
「まだ二三十分おくれるよ」
「そう」
婢は二階の廊下を往って見附から右になった室へ伴れて往った。
「ここならいいのでしょ」
「ああ、いいなあ」
と云った天風は小さな床を背にしてチャブダイの前に坐りながら、急に声をおとして白い前歯を見せて、