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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

(へんだなあ、今日は)

それは午すぎであった。広巳は足にまかして歩いた。

(どうしたと云うのだ)

広巳はどこへ往っているとも、またどこを歩いていると云うことも判らなかった。

(俺は、どうかしてるぞ)

何故、こんなことになったのだと考えた広巳の頭に、醜い嫂の姿が浮んだ。

(彼奴のせいだ、あの畜生のせいだ、彼奴がいなかったら、俺はこんなことになりはしないぞ、あの畜生のせいだ)

あの畜生さえいなかったら山田家は朗かで、鮫洲大尽として人にも尊敬せられて往くのであるが、あの畜生のいるばかりにこんなことになった。

(それと云うのも、兄貴がお人好しだからだ)

兄貴がお人好しで蛇を拝んだり、白蟻の糞を拝んだりしているからだ。兄貴の眼を覚すには、あの蛇からどうかしなくちゃならない。

(あの蛇と白蟻の糞をどうかして、兄貴の眼が覚めたら、兄貴も何時までも女房の尻にしかれてはいないのだ、女房に踏みつけられて、それで他から金をとられるなんて、こんなばかばかしいことがあるものじゃない)

広巳の口元にはその時微笑が浮んだ。広巳は二人の悪党にせめてもの復讐したことを考えだしているのであった。