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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
「月の晩に、海晏寺の前でお眼にかかりました」
「ああ」
しかし、幼な朋友としての女は思い出せなかった。女は定七の方へ顔をやった。
「小父さん、海苔をつけていた新吉を御存じでしょうか」
定七はすぐ記憶を呼びおこした。
「そうだ、新吉の、それじゃ汝さんは、せつぼうだ」
女は莞とした。
「その節でございます、暫くでございました」
「どうも暫くだ、暫くだから、ゆっくり話もしたいが、今日はとりこみがあって、ゆっくりしていられない、明日でも、また」
「これは、どうも失礼いたしました、それでは、また、明日にでもあがります」
女はそう云ううちにも広巳の気配に注意していた。女は広巳をしっかりと見た。
「山田さま、それでは、また、明日でもお邪魔さしていただきます、それでは」
女はおじぎをしてお鶴を伴れて往ってしまった。定七は気をせいていた。
「それでは、若旦那、まいりましょう」
「うん」
二人は歩きだした。そして、海晏寺の前を通りすぎたところで、どこからか竹杖にすがった壮い男が、とんとん飛び歩きをしながら豪い勢で出て来た。それは長吉の甥の音蔵であった。音蔵の両手は血に染まっていた。音蔵の後から音蔵を追っかけるようにして四五人の者が来ていた。