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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
傍視も揮らずに一心になって草の路を追っている菊江の耳に物の気配がした。菊江は無意識に後を揮返った。そこにはすこし離れて歩いて来る者があった。菊江ははっと思って立ちどまった。背の高い痩ぎすな男の姿が朦朧としてあらわれた。菊江は鬼魅が悪くなったので、急いですたすたと歩いた。
一段地所が高くなって処どころ椎の木を植えた処があった。菊江はそこの傾斜の赭地の肌を駈けあがりながら揮返った。背の高い痩せぎすな男の姿はすぐ後にあった。路通りなら己といっしょに駈け歩くはずがない。菊江の心は顫えたが、それでも菊江の心にはどこか余裕があった。路通りから己をつけている者かためしてみれば判ると思った。菊江はすぐ駈けあがった地所を右に切れて、そこの椎の木の下へ往って揮返った。背の高い痩ぎすな男の姿が己の駈けあがって来た傾斜の端にあった。それはどうしても己をつけている悪漢であった。
菊江は椎の木の前からまた赭土の傾斜をすべりおりるようにおりて、ちょっとはしって揮返った。背の高い痩ぎすな男の姿はまたそこの傾斜にあった。いよいよ悪漢であった。菊江は大声を立てて援いを求めようとしたが、刑事か巡査が通っていないかぎり、人家はそれほど遠くないにしたところで、この夜更けにすぐ援いを求めることはできないうえに、声をたてたがために肴の傍に近づいた猫