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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

ないと云うところから、何人か知己の者を頼って東京へ来ているのか、もうとうに他に夫が出来ていて、その夫と二人が来ているのか、と云うようなことを考えてみたが、そのうちで、友人と二人で遊びに来ていると云うような、のんきな二人のためには幸福であるべき方のことは、二度と思い浮べてやることができなかった。

家へ帰ると、私は火鉢の傍で、一人で茶を入れて飲みながら、次の室で小供を寝かしている妻室に、その話をして聞かせた。

「そう、そうですか」

妻室はその友人も女も知らないので、なんの興味もないと云うような生返事をしていたが、何時の間にか睡ってしまった。

その翌日も会社の方が晩くなって、上野の広小路で電車を乗換えて帰ったので、もしか、今晩あたりも、その辺を歩いていやしないか、と、今度は厩橋に寄った方の側を、ぶらぶら歩いて、不忍の池の落口になった橋の側まで往ったところで、ばかばかしくなって来たので、引返して帰って来た。

それから五日ばかりしてのことであった。日曜日で昼過ぎまで雨が降っていて、一時比から晴れて好い天気になったので、市ヶ谷の下宿にいる軍人の処へ往って、そこで夕飯に酒を飲んで、八時比になって帰りかけたが、久しぶりで神保町の本屋をひやかしてみる気になり、新見附から九段へ出て、神保町の右側の方を歩いていた。