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にっき
日記
宮本 百合子
22 一九三八年(昭和十三年)
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,910 字 · 14 页
一月五日
それで出かける。さし入れだけした。かえりに林町へゆき、途中,80で水牛の印をつくる。
寿江ひとり。おみやさん。いろいろ音楽をきく。テムパニーが出征しそうだと云って悄気ている。マラーの作品がやれるかやれないかと気をもんでいる由(新響)
夜三吾さん、ヴァイオリンをかえしに来た。彼の楽器はくらべて見ると全く胴がふくらんでいる。ふくらみすぎている。ダンスホールが閉まると、楽士があまってどうなることかと云っている。石井漠この間のトリオの放送をやめた由。ほめてくれるのは首のつながること故結構だと云った。
一月五日(水曜)
テーブルのところで新聞をひろげたら、岡田嘉子若き愛人杉本良吉と北樺太にて行方不明と出ている。国境守備警官慰問に出かけ、そのかえりに行方不明になった由。
白揚社へ本を買いに出かける。よく晴れて、さむい風が吹いて、日が照っている。白い雪の上にあるそういう空と日光とを思い出した。実にまざまざと。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)のマローズの午後。林の間の雪の上にさしている斜光。早い夕暮。夜。芝居。橇の馬の音など。そして凍死の可能をも。深い感想をもって歩いた。