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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

吉川英治『治郎吉格子 名作短編集(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:治郎吉格子、増長天王、醤油仏、八寒道中、野槌の百、銀河まつり、無宿人国記、雲霧閻魔帳。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,609 字 · 362 页

青空文庫

夏から、秋まで。

だが、稼いでも稼いでも、農具や馬の金具では、百の望む金だかになるはずはない。百は、七兵衛から借りた百両と、お稲をよろこばす金だけが欲しかった――だが、どうして、二百両から上の金が。

で、かれが、思いついて鍛ったのは、小柄だった。

それも、一本や二本では、望むだけの金にはならない。秋までに、かれは、大小十組の小柄をきたえた。

いや、それでもまだ足らない。野鍛冶の鍛った小柄が、一本いくらに売れるかと考えれば、十年、槌の鬼になって稼いでも、二百両の金が蓄まるかどうだか。百も、知っていた。自身でそれを知りながら、そうして、必死にやっていたのは、何か一策があったとみえる。

石神神社の祭りで、村から村に、阿佐ヶ谷神楽の馬鹿ばやしが、ほがらに聞えている秋の一日だった。

「おっ母、ちょっくら、江戸まで行ってくるぜ」

「何しに?」

おしげは、不安らしかった。

「なに、心配はねえ。仕事のはけ口を見つけに行くのよ。帰って来たら、借金も返すし、おっ母にも安心させるぜ」

「じゃ、そんな泥くせえ身装をしてゆかねえで、こっちの、袷をきいてゆくがいい」

「おや、仕立おろし。