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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

雷門以北「東京日日新聞 夕刊」1927(昭和2)年6月30日~7月16日<br>吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年2月<br>続吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年3月<br>隅田川両岸「中央公論」1935(昭和10)年9月<br>浅草田原町「三田文學」1912(明治45)年2月<br>あやめ団子「花形」1920(大正9)年8月<br>相模屋の路次・浅倉屋の路次「新演藝」1920(大正9)年8月<br>浅草の喰べもの「中央公論 夏期特別號」1920(大正9)年7月<br>夏と町々「時事新報 夕刊」1929(昭和4)年6月1日~30日<br>絵空事「新潮」1932(昭和7)年3月<br>一年「東京新聞」1946(昭和21)年4月15日<br>浅草よ、しずかに眠れ「苦樂」1948(昭和23)年2月<br>夜店ばなし「婦人公論」1931(昭和6)年7月<br>除夜「週刊朝日」1930(昭和5)年12月28日號<br>正月「婦人公論」1932(昭和7)年1月<br>水の匂「文藝春秋」1941(昭和16)年7月<br>町々…… 人々……「別冊文藝春秋」1955(昭和30)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 页

青空文庫

……すなわち例月二十八日の賑い……むかしながらの、うちみはむかしにちっともかわらない昼縁日のあらわなけしきがありました。

まえに、うしろに、右に、左に、いくつにもわかれて出来た人の輪の、そのほうぼうの間を縫ってそこにもここにも荷を下ろしたおでんや、パンや、氷や……浪の花をうず高くもり上げたうで玉子や、旗を立てたアイスクリームや、赤い薄荷を硝子の壺に入れたお好み焼や。……ですが、天気のわるいせいか、どの荷のまえにも、屋台のさきにも、うらみッこなしに一人の客も立っていないので。――いえば、だから、いたってのしらじらとした感じ……

第一の人の輪のなかをわれわれは覗きました。盲目が浪花ぶしをやっていました。ひしゃげた鳥打帽子にお約束の色の剥げた紋つきの羽織、四十恰好の小柄な男が三味線を抱えてしきりに牡蠣のような眼をむいていました。何をやっているのか分らなかったものの、津の国屋津の国屋とうるさくいっていたのに徴して「安政三組盃」かも知れないとおもいました。――抱えた三味線の、どの糸だかの切れてだらりと下っているのも惨めな感じでした。

第二の人の輪のなかを覗きました。