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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

雷門以北「東京日日新聞 夕刊」1927(昭和2)年6月30日~7月16日<br>吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年2月<br>続吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年3月<br>隅田川両岸「中央公論」1935(昭和10)年9月<br>浅草田原町「三田文學」1912(明治45)年2月<br>あやめ団子「花形」1920(大正9)年8月<br>相模屋の路次・浅倉屋の路次「新演藝」1920(大正9)年8月<br>浅草の喰べもの「中央公論 夏期特別號」1920(大正9)年7月<br>夏と町々「時事新報 夕刊」1929(昭和4)年6月1日~30日<br>絵空事「新潮」1932(昭和7)年3月<br>一年「東京新聞」1946(昭和21)年4月15日<br>浅草よ、しずかに眠れ「苦樂」1948(昭和23)年2月<br>夜店ばなし「婦人公論」1931(昭和6)年7月<br>除夜「週刊朝日」1930(昭和5)年12月28日號<br>正月「婦人公論」1932(昭和7)年1月<br>水の匂「文藝春秋」1941(昭和16)年7月<br>町々…… 人々……「別冊文藝春秋」1955(昭和30)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 页

青空文庫

子供の仮面が、あるとき、痛快に、もののみごとに引ッ剥がれた。その英語の時間にである、その時間に香取先生によってである。

「勉強せい!」

一ト言……たったそう一ト言いわれてすくみ上った。

というのも重々こっちがわるかったので、忘れもしない、神田リーダーの、あなたはわたくしよりせいが高い、かれはあなたよりせいが高い、かれは三人のうちで一番せいが高い。……そこんところを香取先生、噛んでくくめるように、一ことを幾度も、しかくあなたはわたくしよりせいが高い、かれはあなたよりせいが高い、かれは三人のうちで一番せいが高いとそればかりくり返すのをじれったく、もういい分った、いつまでおんなじことをいっているんだ、と甚だ不届きに、わきを向いて、となりのものとわたしは話をはじめた。――勿論なんの話、どんな話をそのときはじめたかはおぼえていないが、どのみち公園の、加藤剣舞の最近替った演しものについての話か、でなければ押川春浪の『海底軍艦』の話か、でなければすぐもうそこに眼のまえに迫った四万六千日の話か……なぜならそれが一学期の末の、すぐもうあかるい夏休みになるであろう時分だったから。