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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

雷門以北「東京日日新聞 夕刊」1927(昭和2)年6月30日~7月16日<br>吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年2月<br>続吉原付近「中央公論」1929(昭和4)年3月<br>隅田川両岸「中央公論」1935(昭和10)年9月<br>浅草田原町「三田文學」1912(明治45)年2月<br>あやめ団子「花形」1920(大正9)年8月<br>相模屋の路次・浅倉屋の路次「新演藝」1920(大正9)年8月<br>浅草の喰べもの「中央公論 夏期特別號」1920(大正9)年7月<br>夏と町々「時事新報 夕刊」1929(昭和4)年6月1日~30日<br>絵空事「新潮」1932(昭和7)年3月<br>一年「東京新聞」1946(昭和21)年4月15日<br>浅草よ、しずかに眠れ「苦樂」1948(昭和23)年2月<br>夜店ばなし「婦人公論」1931(昭和6)年7月<br>除夜「週刊朝日」1930(昭和5)年12月28日號<br>正月「婦人公論」1932(昭和7)年1月<br>水の匂「文藝春秋」1941(昭和16)年7月<br>町々…… 人々……「別冊文藝春秋」1955(昭和30)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 页

青空文庫

そこに、何ら皮肉があるんでもなく、穿ちがあるんでもなく、ことさらの味があるんでもなかった。智慧のないことこの上ないものだった。

「まるで素人のような落語家だね。」

さすがに水上君だ、ピタリと一ト言、トヾメをさした。

けど、それはまァ、もともとそんなものなんだからそれでもいい、その間で饒舌った本職の落語、それを聴いてわたしァあきれた。――あきれたというより、いいえ、腹が立った……

なぜといって、君、その噺が「おせつ」の前半を焼直したような噺だ。お約束のおしゃべりの小僧が大旦那につかまって若旦那の秘密をべらべらしゃべる。それはいい。そのなかで小僧が自動車の通をならべてシボレーの何のという。円タク発生以前の辻ぐるまのうえにそれをいうんだからなまぎきも甚しい。で、そのあと柳橋の待合へ行くと、女中が出て来て、若旦那の顔をみてすぐ大きな声で主人を呼ぶ。何といってそれを呼んだと思う?

「ちょいと、かァさん……」

どこの国に「おかみさん」をつかまえて「かァさん」という待合の女中がある?――もしあるとしても、わたしは、決してわたしは、わたしのその寡聞を恥じないであろう、だ……