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かいじょうはつでん

海城発電

泉 鏡花

「太陽 第二卷第一號」1896(明治29)年1月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,039 字 · 25 页

青空文庫

あたりを見たる眼配は、深夜時計の輾る時、病室に患者を護りて、油断せざるに異ならざりき。看護員に迫害を加うべき軍夫等の意気は絶頂に達しながら、百人長の手を掉りて頻りに一同を鎮むるにぞ、その命なきに前だちて決して毒手を下さざるべく、かねて警むる処やありけん、地踏韜蹈みてたけり立つをも、夥間同志が抑制して、拳を押え、腕を扼して、野分は無事に吹去りぬ。海野は感謝状を巻き戻し、卓子の上に押遣りて、

「それでは返す。しかしこの感謝状のために、血のある奴等があんなに騒ぐ。殺せの、撲れのという気組だ。うむ、やっぱり取っておくか。引裂いて踏んだらどうだ。そうすりゃちっとあ念ばらしにもなって、いくらか彼奴らが合点しよう。そうでないと、あれでも御国のためには、生命も惜まない徒だから、どんなことをしようも知れない。よく思案して請取るんだ、可か。」

耳にしながら看護員は、事もなげに手に取りて、海野が言の途切れざるに、敵より得たる感謝状は早くも衣兜に納まりぬ。

「取ったな。」と叫びたる、海野の声の普通ならざるに、看護員は怪むごとく、

「不可ないですか。」

「良心に問え!」

「やましいことはちっともないです。