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かいじょうはつでん
海城発電
泉 鏡花
「太陽 第二卷第一號」1896(明治29)年1月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,039 字 · 25 页
この室に居るものは、皆な君の所置振に慊焉たらざるものがあるから、将校方は黙許なされても、そんな国賊は、きっと談じて、懲戒を加ゆるために、おのおの決する処があるぞ。可か。その悪むべき感謝状を、こういった上でも、裂いて棄てんか。やっぱり疚ましいことはないが、ちょっとも良心が咎めないか、それが聞きたい。ぬらくらの返事をしちゃあ不可ぞ。」
看護員は傾聴して、深くその言を味いつつ、黙然として身動きだもせず、やや猶予いて言わざりき。
こなたはしたり顔に附入りぬ。
「きっと責任のある返答を、此室に居る皆に聞かしてもらおう。」
謂いつつ左右をしたり。
軍夫の一人は叫び出せり。「先生。」
渠等は親方といわざりき。海野は老壮士なればなり。
「先生、はやくしておくんなせえ。いざこざは面倒でさ。」
「撲っちまえ!」と呼ばわるものあり。
「隊長、おい、魂を据えて返答しろよ。へん、どうするか見やあがれ。」
「腰抜め、口イきくが最後だぞ。」
と口々にまたひしめきつ。四五名の足のばたばたばたと床板を踏鳴らす音ぞ聞こえたる。
看護員は、海野がいわゆる腕力の今ははやその身に加えらるべきを解したらむ。