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かいじょうはつでん
海城発電
泉 鏡花
「太陽 第二卷第一號」1896(明治29)年1月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,039 字 · 25 页
されども渠はいささかも心に疚ましきことなかりけむ、胸苦しき気振もなく、静に海野に打向いて、
「ちっとも良心に恥じないです。」
軽く答えて自若たりき。
「何、恥じない。」
と謂返して海野は眼をりたり。
「もう一度、きっとやましい処はないか。」
看護員は微笑みながら、
「繰返すに及びません。」
その信仰や極めて確乎たるものにてありしなり。海野は熱し詰めて拳を握りつ。容易くはものも得いわでただ、ただ、渠を睨まえ詰めぬ。
時に看護員は従容、
「戦闘員とは違います、自分をお責めなさるんなら、赤十字社の看護員として、そしておはなしが願いたいです。」
謂い懸けて片頬笑みつ。
「敵の内情を探るには、たしか軍事探偵というのがある筈です。一体戦闘力のないものは敵に抵抗する力がないので、遁げらるれば遁げるんですが、行り損なえばつかまるです。自分の職務上病傷兵を救護するには、敵だの、味方だの、日本だの、清国だのという、さような名称も区別も無いです。ただ病傷兵のあるばかりで、その他には何にもないです。ちょうど自分が捕虜になって、敵陣に居ました間に、幸い依頼をうけましたから、敵の病兵を預りました。