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かいじょうはつでん

海城発電

泉 鏡花

「太陽 第二卷第一號」1896(明治29)年1月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,039 字 · 25 页

青空文庫

別離苦に一目てえんでたった一人駈出してさ、吹雪僵になったんだとよ。そりゃ後で分ったが、そン時あ、おいらッちが負って家まで届けてやった。その因縁でおいらちょいちょい父親の何とかてえ支那の家へ出入をするから、悉しいことを知ってるんだ。女はな、ものずきじゃあねえか、この野郎が恋しいとって、それっきり床着いてよ、どうだい、この頃じゃもう湯も、水も通らねえッさ。父親なんざ気を揉んで銃創もまだすっかりよくならねえのに、此奴の音信を聞こうとって、旅団本部へ日参だ。だからもう皆がうすうす知ってるぜ。つい隊長様なんぞのお耳へ入って、御存じだから、おい奴さん。お前お検の時もそのお談話をなすったろう。ほんによ、お前がそんねえな腰抜たあ知らねえから、勿体ねえ、隊長様までが、ああ、可哀想だ、その女の父親とか眼を懸けてつかわせとおっしゃらあ、恐しい冥伽だぜ。お前そんなことも思わねえで、べんべんと支那兵の介抱をして、お礼をもらって、恥かしくもなく、のんこのしゃあで、唯今帰って来はどういう了見だ。はじめに可哀想だと思ったほど、憎くてならねえ。支那の探偵になるような奴あ大和魂を知らねえ奴だ、大和魂を知らねえ奴あ日本人のなかまじゃあねえぞ、日本人のなかまでなけりゃ支那人も同一だ。