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たきぐち

滝口

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1963(昭和38)年11月〜1964(昭和39)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,815 字 · 99 页

青空文庫

が合流するように、しぜんと双方からよりあい、愛情や信頼をとり戻すが、やがてまた次の洲にぶっつかって分れ分れになる、――この川の洲は十三しかないけれども、人間の一生には数えきれないほどの洲がある、とね」

畠中はちょっとまをおいて云った、「益村には昔から、そういう思わせぶりなことを云う癖があった、よくない癖だ」

「家風でね、祖父もそうだったし、父もこんなふうだったよ」

「代々の留守役ということか」

益村は肩をすくめた。

「留守役は一般の勤めかたとは違う」と畠中が続けた、「――他藩との折衝が多く、それには政治的なかけひきが付きものだし、ときには幕府の重職とも交渉に当らなければならない、話術にも特別な技巧が必要だろうし、酒席の設けかたにはむずかしい按配があるそうだ」

「けれども」とひと息ついて畠中は云った、「それが留守役に欠くことのできない資格ではない、鶴井家は同じ留守役でも不粋ぶこつで知られている。当代の清左どのは一滴の酒も飲めず、酒席のとりもちは粗忽だらけだというではないか、しかもこれまでに、役目のことで失策したという例は聞いたためしがない」

「名臣伝にでものせるか」