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たきぐち
滝口
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1963(昭和38)年11月〜1964(昭和39)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,815 字 · 99 页
問屋ではなくて、注文された材木を問屋から卸し、買い手に渡す仲買のようなもので、男の雇人も三人しかいなかった。木場は気ふうの荒いところであり、おりうはひとり娘だったから、しぜんと勝ち気になり、幼ないころから、自分が女であることを常に呪わしく思って育った。
「おかしいようだけれど、笑わないでね」おりうは酔いのために少し赤くなった頬へ、そっと手をやりながら云った、「――あたしの躯はわせだったのね、十二の春にお乳がふくらみだしたの、もう恥ずかしくって恥ずかしくって、おっ母さんとお湯へはいるのもいやだったし、両方のお乳を切って捨ててしまいたいって、本気になって考えたくらいよ」
躯に娘らしいまるみがあらわれるにつれ、自分の肉躰が汚辱され穢され、腐ってゆく革袋のように思えた。そして男がうらやましく、男に生れてこなかった自分を憎悪した。――おりうが十五の年に父親が急死し、父はしょうばいの才がなかったため、あとに借金が残って、母親とおりうはたちまち生活に窮した。母親もまたおっとりした人というだけで、親子二人のくらしをたてるだけの気力もなかった。
「めぐりあわせってふしぎなものね」