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たきぐち
滝口
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1963(昭和38)年11月〜1964(昭和39)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,815 字 · 99 页
とおりうは云った、「女だということをそんなにも嫌ったあたしが、髪化粧をし派手な物を着て、女であることをひけらかして生きなければならなくなったのよ、その年の十一月、あたしは東両国の甚兵衛という、小さなお茶屋へかよい奉公にはいったんです」
「十五にもなれば早いとはいえないさ」
「あたし十七より下ではないって云われましたわ」安宅に酌をしながら、おりうはいたずらっぽく微笑した、「誰にも負けてはいないし、旦那にでもおかみさんにでも突っかかっていくから、十五やそこらの小娘とはみえなかったんでしょ、甚兵衛は二十日ばかりかよっただけでやめてしまいました」
安宅は庭を見た。百日紅の花は散りつくして、石仏の脇にあるはぜの木がみごとに紅葉していた。我流の庭造りにもとりえはあるんだな、と彼は思った。腰掛のある築山や、池に架けた石の太鼓橋や、そこらじゅうにある石燈籠や石仏を囲んで、無計算に植えられた木や竹や草類は、無計算なままで、それぞれが季節どおりに花をつけ、紅葉し穂を出す。いまはぜの木が血のような鮮やかな色に紅葉しているが、それが脇にある石仏の苔むした姿と、おどろくほどぴたりと調和してみえた。