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たきぐち
滝口
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1963(昭和38)年11月〜1964(昭和39)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,815 字 · 99 页
鳴き声も覚えてしまった。
「こんどはおまえの番だって云うの」とおりうは話し続けていた、「おれはおまえのために家名も侍の面目も投げだした、こんどはおまえが自分を投げだす番だって、そして、いきなりとびかかってあたしを押し倒したわ」
おりうは抵抗しなかった。躯の力をぬき、眼をつむって、されるままになっていた。芳村伊織は溺れそうになった人間のように、激しく喘ぎながらおりうの帯を解き、着物をぬがせ下衣を剥いだ。しかし彼にはそこまでしかできなかった。裸にされた素肌に、夜風の冷たさを感じて、おりうが眼をあけてみると、芳村はすぐ脇で仰向けにのび、苦しそうに両手で胸を押えて、頭を左右に振り動かしながら呻いていた。おりうはすばやく、着物で肌を隠しながら起き直ったが、恥ずかしさと怒りで気が狂いそうになった。気が狂いそうになったというのは、その場で芳村を殺してやりたいと思い、芳村の脇差を取って抜いたのが証拠だ。
「刀ってこわいものね」おりうはぞっとしたように肩をすくめた、「――行燈の灯が刀にうつって、ぎらっと冷たく光るのを見たら、急に躯がすくんで、がたがたふるえだしてしまったわ」