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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

処がすでに「プラトンの質料」に於て見たように、典型的な観念論による存在の論理にとっても、単に形相(存在)だけでは、結局問題が――宇宙論の問題が――解けないので、形相(有)をそのまま受け容れる処の無が規定されなければならないのであった。併し無が本当に無ならば、パルメニデスの云った通り、夫は元来初めから問題になり得ないものである筈だ。それが問題になることが出来、否、それが問題にならざるを得なかったのは、だから実は、所謂存在(有)という概念だけでは、本当の存在(有)の概念そのものが解決出来なかった証拠でなくてはならぬ。存在は形相では片づかず、却って無と考えられた質料を必要とする。而も形相はこの質料の床の上で初めて形相ともなることが出来る。存在をして存在たらしめるものは所謂存在(形相)ではなくて、却って無(質料・物質・)だということになる。実は、「プラトンの質料」なるものも単なる無などではないので、却って無限に豊富な、何等かの固定した形相(夫が観念論による存在の概念だ)によっては云い表わされ得ないような、もりあふれる存在だったのである*。そうすれば、存在が優越的な意味で何故物質と呼ばれねばならぬかが、判って来た筈だ。