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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

彼はフェニキアやエジプトに通商するために行なった旅行土産として、数学と天文学とをギリシアに輸入したものと推定されている。この数学や天文学は全く技術上の補助手段としてであったことは断わるまでもないので、この技術的手段を用いて予言した日食が適中して、人々はいたく彼を驚歎したと伝えられる。又ハリス河に運河を造って水をはけようとしたのも彼であった。之は軍事上の必要からであったらしいが、一方彼はペルシア人に対してイオニア人の同盟を結成しようとした代表的な政治家でもあったのである。それから彼の実業家としての手腕は、すでにアリストテレスが紹介している。

何にせよタレスは二千五百年も昔の人物で、判然とした業績は判らないのであるが、今問題は一タレスがどのような人物であったかではなくて、従来の哲学史がタレスという哲学者にどのような特色を見て来たかという、哲学史的見解が問題なのである。言葉を換えて云えば、従来哲学が哲学自身をどういうものと考え、どういうものであることを期待していたかが、問題なのである。

タレスが哲学の祖となったのは何も彼が専ら形而上学的な思弁に於て優れていたからだけではない。