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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

之は経験を俟つことなしに二つの科学の位置関係から云っても、先験的にも、そうなければならないのである。物理学は要素的・基本的・な自然科学であればこそ、その方法が厳密であることが出来、又その発達も最も高度に達することが出来たに過ぎない。――処で生物学はこの物理学ほどに厳密でなく従ってそれだけ進歩していない、かのように人々は考えているようである。併しそれはどれ程の意味に取ってよいのか。

広義の生物学の最も厳密な部分が生理学である、と人々は考える。生物学では今なお目的論が支配している、之に反して生理学はすでに目的論などを脱却して因果的説明を与えることに着々成功しつつある、と人々は云うらしい。生理学は――少なくともその進歩的な先端は――着々として物理学の水準に、否寧ろ物理学そのものに、接近しつつあるように見える。併しながら、この生理学と物理学との間にすでに、見逃すことの出来ない質的相違があるのを忘れてはならない。

物理学は一切の自然現象を、物理現象と呼ばれる一般現象に還元し抽象して、之をその対象とする。夫が要素的・基本的・である所以であった。このような物理現象という一般現象は、であるから抽象的な一般者である。