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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

それ故生命は、即ち又生物は、機械的に――物理的化学的に――説明し得ない点を原理上持っている。そこでは何かの意味で生命原理が必要であるだろう。そうすればもはや生命の機械論は成り立たない、生命はただ生気論的にしか説明され得ない。そう彼は考える。

併し生物の生気論的説明はその機械的説明(必ずしも機械論的ではない)と少しも矛盾しない、とドリーシュは主張する。エンテレヒーは物質でもなくエネルギーでもなく、又物質やエネルギーを生じたり消滅させたりするものではないからである。エンテレヒーは凡そそのような物理的・化学的・外延量とは全く異った要因であった。それは物理学や化学で知られている自然の要因と並存して新しい要素的な特異物として登場してくる処の、独自の一個の自然要因と考えられねばならない。けれども機械的な物質乃至エネルギーと生気論的なこのエンテレヒーとが無関係であっては、無論エンテレヒーの意味はなくなって了う。エンテレヒーは、物質乃至エネルギーの可能的な諸転換の内から、特にある一定の場合だけを(そして之は機械的原理から見れば必然ではなくて偶然に過ぎない)現実的なものとして合目的的に選択する処の、嚮導原理である。