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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

確かに「左翼の潰滅」によって最も原則的な打撃を受けねばならなかったものは、之を専ら観念の支柱としていた処の知識人乃至文化人であったのだから、インテリゲンチャの左翼的思想の確信は著しく動揺し、之に施政者の人工的工作が加わって、各種各様の転向現象なるものが展開されたのである。マルクス主義が現実の直接利害ではなくて単なる思想である場合には、こうした形の根柢的なショックは強ち不思議ではなかったのだ。併し「左翼の潰滅」なるものを促進した社会事情であった所謂ファシズム(日本的ファシズム)そのもののデマゴギーも亦、決していつまでも有力な支配力をつなぎとめることは出来なかった。日本に於けるファシズム・イデオロギーは早くも大衆的な反感を呼び起こしたのだ。

この反ファッショ的潜行意識は決して二・二六事件やその後始末に及んで姿を現わし始めたものではないのは勿論であって、三六年度の総選挙に於ては云うまでもなく、すでにその前年の府県会議員選挙に於てさえも見て取れた現象であった。又之を仮に出版業の趨勢から見てもそうなのであって、左翼的出版物は前年あたりから再び次第に勢を盛り返し始めたと報じられている。