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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

――哲学的運動という言葉は、今日では多分あまり大きな誤解を招かないだろう。吾々は社会運動とか精神運動とか云って、運動の概念を物理学的運動から解放することに慣れている。世人が一般的に運動という時には、広く事物の変化を指しているように見える。処がこうした広義の而も含蓄ある意味での変化が、今云った哲学的・本質的・運動に他ならない。

だが空間になると事態はそれ程容易ではない、空間によって世人は大抵、まず第一に物理学的空間を考えるだろう。而も更に困ることは、哲学者達は之まで、こうした狭隘な空間概念に対抗するために、殆んどありと凡ゆる形態の「哲学的」空間概念を工夫して来ているという歴史である。だからここでは哲学的空間という概念が、すでにそれだけで様々な特殊の内容を有たされているのである。吾々がいう本質的空間とはこうした諸「哲学的」空間概念とは無論決して一致しないのである。

時間になると事態はもっと悪化する。ここでは哲学は時間の概念を独占しようとさえ企てる。心理学でいう時間はまだ本当の時間ではない、まして物理学でいう時間の如きは時間の単なる影にしか過ぎない、本当の時間――「時」