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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

今それを見て行こう。

近世的な自由概念はルネサンスに始まると見るべきだろう。イタリヤの商業資本主義の発達につれて、商業都市の隆盛を来し、そこに所謂古典文芸の復興の物質的地盤が用意されたが、そればかりではなく、この初期資本主義によって個人=個性の自覚も亦発生した。かくてメジチ家其の他の紳商によって、芸術家が養成されることになり、従来のギルドの徒弟上りに過ぎなかった工人の位置に芸術家が代って就くことになったのである。芸術家は自分自身の個性に従って、制作・創造・の活動をするが故に、もはや単なる工人ではないのである。吾々はここに近世的な自由概念の故郷を見ることが出来る。

自由は個性に基く独創的な生産活動を意味して来る。之はもはや決して消極的な、何ものかからの非生産的な自由ではない。――処でこの自由は、ダ・ヴィンチやミケランジェロ、或いはボッカッチョに於て見受けられるような、芸術的創造の自由又はロマン的自由に他ならぬ(ロマンは俗語――ロマンス語――による世俗人情的物語で、浪漫主義の歴史的起源をなす。デカメロンが典型的なロマンスであることは人の知る通りだ)。