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げんだいゆいぶつろんこうわ

現代唯物論講話

戸坂 潤

「現代唯物論講話」白揚社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,295 字 · 490 页

青空文庫

いなかった。

かくて、文化的内容と社会に於ける政治的運動への連帯とを兼ね備えた処の、思想らしい思想は唯物論であったわけで、それが、唯物論が文化を圧倒的に支配したということの意味だったのである。

この関係は相当根柢的なもので、社会のあれこれの一時的な変動に応じてそんなに簡単に変更されるものではないわけだが、処がその後、日本の文化事情は根本的に一変したという風に普通は考えられている。所謂「マルクス主義の退潮」・「ファッショ・イデオロギーの進出」なるものがその現象だ。社会運動として云えば「左翼の潰滅」と呼ばれるものに相応する処の現象だ。日本の支配分子の満州行動や対支・対ソ・行動、最近ではドイツ及びイタリヤとの思想的乃至経済的(或いは軍事的)協定、こうした外交現象ともなり、それ自身は弱体であるにも拘らずその背景から云って強力内閣と呼ばれる内閣の、その下に於ける各種の革新的・積極的・経済政治文化に関する統制的政策、という政治現象に対応する現象であることは云うまでもない。こうしてマルクス主義的唯物論はその文化的支配力を失い、ブルジョア社会イデオロギーが、特には又日本型ファシズム・イデオロギー(日本に於ける特殊な封建的残存勢力によってその強圧を強力化した日本的民族国家イデオロギー)が、文化的支配権を握るようになった、