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かがりびのおんな
篝火の女
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1935(昭和10)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,727 字 · 56 页
(其許の娘を、伜に賜わらぬか)
(当人さえ、よいならば――)
と云うような談になって、それでは、帰国した上で、双方の主君の許可を得て、改めて、日もきめよう、結納も交そうとなった。
で、三郎に訊くと、
(是非)
と云うし、八雲の心をただすと、これも、
(お父さまの思し召しのままに)
という答え。勿論、わるくないのである。二人の父は、この幾日かのあいだに、若い息子と、若い娘とのあいだに、どういう感情がながれていたか位は、充分に知っていたので、
(そうだろう……)
と、老後の楽しみを予想するような和やかなほほ笑みを見交した事であった。
そればかりではない。
愈※(二の字点、1-2-22)、別れに臨んでは、口約束だけでは心もとないとあって、三郎進は、
(何か、御息女のおしるしを戴きたいが)
と、自分の意志のかたい所を見せて、こう希望を述べると、
(御もっともな仰せ。しかし、旅先のこととて、何もござらぬが、それでは、娘が吹いた笛の音が、この御縁をむすんだこと故、途中で求めた品でござるが、この杜鵑と銘けた一管を、お誓いの証がわりに、お持ちくださるまいか)
東郷五郎左衛門のことばに、