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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

01 上巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 页

青空文庫

道玄坂まで出れば繁華な商店街があり、映画館なども幾軒かあるので、子供達は何事も物珍しいと見え、却って東京へ来たことを喜んでいるらしいこと、秀雄も全快して今週から附近の小学校へ通う筈であること、等々を語った。

「雪子ちゃんはどないしてます」

「元気にしてはりましたで。秀坊がお腹壊しやはった時かて、看護婦よかよっぽど雪子娘さんの方が看病の仕方心得てはる云うて、御寮人様感心してはりました」

「あの人は悦子が病気の時かてほんまにようしてくれますよってに、きっと姉ちゃんも助かったやろう思うてましてん」

「ただお気の毒なんは、何せそんな家ですさかい、娘さんのおいでになる部屋があれしません。今のとこ二階の四畳半を坊々の勉強部屋に使やはったり、娘さんの寝室に使やはったりしてはりますねんもん。旦那さんも、早うもっと広いとこへ変って、雪子ちゃんの部屋をきめてやらなんだら可哀そうや、云うてはりますねん。………」

この庄吉と云うのは口数の多い方なので、それからちょっと声をひそめて附け加えた。

「旦那さんは、雪子娘さんがお戻りになったんでえらい喜んではりますけど、今度は逃げられんようにせんならん思うてはりますねんな。