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じゆうじん

自由人

豊島 与志雄

「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页

青空文庫

」

「君の言うことはよく分るよ。僕も賛成だ。然し、それは道徳の問題だ。僕の言うのは、人間の本質の問題で、つまり人間の領域を拡げたいのだ。権利の拡張によって、領域を拡張したい。そうしなければ、人間は狭い地域に閉じ込められて、窒息してしまう。殊に機械文明の世の中ではそうだ。」

「今の僕には、そんなことは考えられません。たとい窒息しても、あくまでも人間でありたいんです。僕には一人の母があります。その母を安心させたいんです。もし恋人があるとしたら、どんな犠牲を払ってもその恋人を愛したいんです。それが最も人間らしいことだからです。人間……人間……そればかり僕は考えています。然し考えれば考えるほど、人間は僕の手から遠くへ逃げていきます。なぜでしょう。人間を考えることが、なぜこう淋しいんでしょう。」

須田は泣きながら酒を飲み、酒を飲みながら泣いた。菅原も憂鬱そうに黙りこんだ。

暴風雨はやみそうになかった。

「周さんが見えましたよ。」

女中の後からすぐ、周組南とも一人がはいって来た。

その機会に須田は帰っていった。

菅原は北村と二人を紹介した。周の連れについては、ただ本堂誠と名前だけしか言わなかった。