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じゆうじん

自由人

豊島 与志雄

「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页

青空文庫

さっき、遠くからおばさまの姿を見かけて、家にいらっしゃるのを見届けて、よっぽど、も少し外をぶらついてこようかと思ったけれど、重い荷物をさげてたものだから、置きに帰って来たの。すると、小父さまがいらしてるんでしょう。助かったわ。これで一生懸命、知恵をしぼったつもりよ。屋台店、ね、屋台店を小父さまは讃美していらしたわね。この屋台店、いかが?」

「そりゃあ、申し分ないがね。然し、どうも理屈が違うようだ。屋台店が主なのか、その井上のおばさんとかを避けるためのカムフラージュが主なのか、そこのところがはっきりせんね。」

「一挙両得………一石二鳥……。」

歌うように言って、千重子は笑った。それから突然、縁台に腰掛けてる足先で地面を二三度強く蹴った。

「井上のおばさま、ずいぶん失礼よ。ほんとは田島さんの方が失礼なんだけれど、それはあのひとの持ち前だもの、井上のおばさままで失礼にならなくったっていいわ。例のわたしとの縁談のことよ。こうなんです。いつまでもあやふやなままでは困る。田島さんにもほかに幾つも縁談があるが、こちら様との話がはっきりしないうちは、先方へ返事のしようがないし、こちら様もたぶん同じことだろうし、この際、はっきりした御返事が承りたいと、そう仰言ったそうですの。