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じゆうじん
自由人
豊島 与志雄
「芸術」1948(昭和23)年7月、9月、11月、1949(昭和24)年1月(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,030 字 · 139 页
小泉先生と大勢、と富子は言ったが、来客は三人に過ぎなかった。先刻からの井上夫人と、新たに小泉博士と田島章吾がやって来ただけだ。但し、こちらにとっては不意打ちではあるが、先方にも手違いがあった。
章吾と千重子との縁談の仲人として、井上夫人は、幾度か松本家へやって来るうちに、近頃の順造の様子を富子から聞かされ、これはどうしても小泉博士の診察を受けさせねばいけないと考えた。その意を田島にも伝えた。縁談とは別な問題だ。そして井上夫人が富子を説き伏せに来てるところへ、田島が小泉博士を連れて来てしまったのである。
小泉博士と松本順造とは昔から懇意な仲だ。小泉は松本が寝ついてるものと思ったらしく、すぐに病室へ通ろうとした。富子は困った。散らかしているからと口実を設けて、順造のところへ行った。
順造は寝ながら書物を読んでおり、縁側で八重子が毛糸の編物をしていた。
「なんです、いつもいつも編物ばかりして。少し片付けなさい。」
心にもなく小言を言って、それから、小泉博士が来てることを順造に知らせた。
順造は半身を起した。
「なに、小泉君。お前が呼んだのか。」
「いいえ。